【小説】「機龍警察 暗黒市場」 月村了衛
「『凍ったヴォルガ川よりも冷静になれ』」
ユーリは一瞬相手を見つめた。
「忘れるな。常に冷静でいるんだ。さあ行け」
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵(ドラグーン)”の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した―日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。
個人的には機龍警察シリーズでいっちゃん大好きな3作目。
ユーリさんに感情移入しやすいのも原因かもしれない。いやあ、ライザさんはちょっと遠すぎて、姿さんはちょっと超越的すぎて……
で、出たー! イズムィコさんだ!(巻末に突然出てきたイズムィコさんに激しく取り乱す)
いやあ、ほんと悪役がいきいきしてます機龍警察。「自爆条項」のキリアンさんもオシャレな悪役でしたが、間違いなく酷薄な悪人にもかかわらず人情味を感じるゾロトフさんもかっこいい悪役だった。悪役が素敵な話に悪い話はない。
素晴らしいのは素敵なのは悪役だけじゃないこと。今巻の主人公であるユーリさんのかっこよさはまあ当然として、モスクワ民警の痩せた犬どもがユーリのキャラの深みを増させてるのは間違いない。班長め。
かっこいいのが主人公、悪役、主人公の過去に関わる人物……だけでないというのはどうなってるのか。これまで散々引っ掻き回してきたクワンさんとも一時共闘し、なかなかの頼れる兄貴っぷりをやってくれる。途中でユーリを拾った黄さんも出番は短いながら強烈な印象。中国人どもめいい役もらいやがって。
手に汗握る潜入捜査もかなり気合が入っており、まさしく警察小説でした。